歯を失ってしまった場合に、歯を入れる方法は3つあります。
「早く治療を終えたい」「できるだけ安く済ませたい」など、治療法選びのポイントは人それぞれです。
では、歯を入れる方法にはどのような選択肢があり、どのような特徴があるのでしょうか。
メリットやデメリットを正しく理解し、個々の状況に合ったベストな治療法を選んでいきましょう。
歯を入れる方法
虫歯や歯周病などが原因で歯を失ってしまった場合に、歯を入れる方法は3つあります。
- ブリッジ
- 入れ歯
- インプラント
「どの方法で歯を入れるのか」という選択がとても重要になってきます。
それぞれの方法に対して患者さん自身が知識がないと、「歯医者さんで勧められたから」という理由で決めてしまう人もいるでしょう。
目安となる数値で、3つの方法を比較してみましょう。
ブリッジ | 入れ歯 | インプラント | |
---|---|---|---|
治療期間 | 1ヶ月 | 1ヶ月 | 3~6ヶ月 |
保険適用 | 1万~1万5千円 /3本 | 6,000円 /1本 | なし |
自費 | 7~20万円 /3本 | 7~20万円 /1本 | 40~60万円 /1本 |
お手入れ | 歯磨き | 歯磨き 入れ歯清掃 | 歯磨き 半年程度でメンテナンス |
違和感 | 少ない | あり | なし |
耐久年数 | 7~8年 | 6~7年 | 数十年~半永久的 |
どの方法にもメリットやデメリットがありますので、正しく知識を持った上で歯医者さんと相談をするべきです。
歯を入れる3つの方法について、基本的な知識を身に着けておきましょう。
ブリッジとは
歯を失った場合の治療方法として、ブリッジがあります。
ブリッジとは英語で橋という意味がある通り、欠損歯の左右の歯を削って人工の歯を橋のように架ける治療方法です。
ブリッジの種類やメリット・デメリットなどについて、ご説明します。
- ブリッジとは
- ブリッジの種類
- ブリッジのメリット
- ブリッジのデメリット
ブリッジとは
ブリッジとは、1本の欠損歯があった場合に左右の歯を支台歯という土台にして、人工の歯を置く治療法です。
欠損歯が少ない時に向いている方法で、複数本の歯を入れたい場合には向きません。
一度入れたら取り外しできませんので、入れ歯のような着脱の手間がかからず特別なお手入れも不要です。
人工の歯はしっかりと固定されますので違和感が少なく、自然に食事ができる方法だといえるでしょう。
ただし健康な歯を削って支台歯としますので、負担がかかってしまうという懸念があります。
ブリッジの種類
特殊なブリッジの種類として、インレーブリッジや延長ブリッジがあります。
- インレーブリッジ
- 延長ブリッジ
インレーブリッジとは、土台となる支台歯に詰め物をして人工の歯を支えるブリッジです。
一般的なブリッジの支台歯は神経を抜く必要があるケースもありますが、インレーブリッジは支台歯を削る範囲を少なく抑えられますので、神経を残せる可能性があります。
延長ブリッジは、1番奥の歯が抜けた時などに用いられる方法です。
片側の支台歯で支えますので、支台歯への負担が大きくなってしまいます。
ブリッジのメリット
歯を入れる方法として、ブリッジを選ぶメリットはこちらです。
- 装着に安定感があり、違和感が少ない
- 保険適用になる場合がある
- 施術時間が短時間ですむ
歯の治療をしたとしても、違和感なく自分の歯で食事をしたいと考える人は多いでしょう。
ブリッジは安定感があり、今まで通り食事が楽しめるというのが大きなメリットとなります。
ブリッジを入れる箇所によっては保険適用となりますので、比較的安価に治療できます。
インプラントを入れるとなると手術が必要になりますが、それに比べるとブリッジは施術時間が短時間ですみます。
ブリッジのデメリット
歯を入れる方法として、ブリッジを選ぶデメリットはこちらです。
- 健康な両隣の歯を削らなくてはいけない
- 支台歯に負担がかかる
- 歯の隙間から空気が漏れて発音に支障がでる
- 虫歯になりやすい
先述した通り、支台歯となる左右の歯を削り、負担がかかるのが懸念点です。
また目には見えない小さな隙間から空気が漏れて、発音しにくくなったと感じる方もいるようです。
ブリッジと歯茎の間にある隙間は、食べカスがつまりやすく、虫歯の原因となる場合もあります。
入れ歯とは
入れ歯とは残っている健康な歯にバネを引っかけて、人工の歯を入れる方法です。
複数本の歯を失った場合でも対応でき、全ての歯がない場合は総入れ歯、部分的に入れる場合は部分入れ歯となります。
ブリッジとは違い取り外し式なので、自分でメンテナンスをしていく必要があります。
- 入れ歯の種類
- 入れ歯のメリット
- 入れ歯のデメリット
入れ歯の種類
入れ歯をつくる素材によって、以下のような種類があります。
名称 | 歯茎部分の素材 |
---|---|
レジン床義歯 | レジン (プラスチック) |
金属床義歯 | コバルトクロム チタンゴールド |
シリコン義歯 | シリコン |
ノンクラスプ デンチャー | 特殊ナイロン |
入れ歯には保険適用になるものと自費のものがあり、レジン床義歯が保険適用になります。
安く治療できますが、噛みにくさがあったり、見た目に違和感を感じるかもしれません。
金属アレルギーの方は、アレルギーのない金属を選ぶよう注意しなくてはいけません。
費用や審美性を考慮して、入れ歯の種類を考えていきましょう。
入れ歯のメリット
歯を入れる方法として、入れ歯を選ぶメリットはこちらです。
- 3本以上の治療が可能
- 健康な歯を削らずにすむ
- バリエーションが多いので気に入ったタイプを選べる
- 毎日手入れできるので清潔に保てる
- レジン床義歯であれば保険適用になる
ブリッジの場合は、欠損歯が複数本連続した場所には向きませんが、入れ歯であれば複数本の治療も可能です。
周辺の歯を削る必要もありませんし、多くの種類から気に入ったタイプを選べます。
取り外してお手入れができるので、常に清潔に保てるというのもメリットになるでしょう。
入れ歯のデメリット
歯を入れる方法として、入れ歯を選ぶデメリットはこちらです。
- 入れ歯を支える歯に負担がかかる
- 金具が目立って気になる
- 慣れるまで時間がかかる
- 毎日のお手入れが手間になる
部分入れ歯を入れる場合は、入れ歯を支える歯に負担がかかります。
引っかけている金属の見た目が気になる、違和感を感じるという方もいるかもしれません。
食事や発音といった面で、慣れるまで時間がかかるというケースもあるようです。
さらに衛生面では毎日のお手入れがメリットとなりますが、手間という面ではデメリットに感じる人もいるかもしれません。
インプラントとは
あごの骨にチタンでできた金属を埋め込んで、人工歯を固定する治療をインプラントといいます。
外科の手術が必要になりますので治療には時間がかかりますが、最も自然な歯に近い仕上がりになります。
- インプラントの材質
- インプラントのメリット
- インプラントのデメリット
インプラントの材質
インプラント体としてあごに埋め込むのは、純チタンかチタン合金が一般的です。
インプラントの人工歯は、以下のような素材でできています。
素材 | 特徴 |
---|---|
オール セラミック | 審美性が高い 天然歯を再現できる |
ジルコニア セラミック | 強度が強い 前歯だと見た目が気になる可能性も |
ハイブリッド セラミック | レジンとセラミックでできている 安価である |
このようにインプラントの人工歯の材質によって、仕上がりの見た目や強度、費用に差がでます。
手術方法もひとつではありませんので、インプラントを希望するのであれば専門医でじっくりと相談し、治療方法を決めていきましょう。
インプラントのメリット
歯を入れる方法として、インプラントを選ぶメリットはこちらです。
- 自然な仕上がり
- 健康な歯を削らなくていい
- 違和感なく食事ができる
- 一度治療をすれば半永久的に使える
- かみ合わせが自然で発音の違和感がない
入れ歯のように金具が見える心配もなく、天然の歯に近い見た目なので審美性が高い治療法です。
健康な歯を削る必要がなく、一度治療をしてしまえば長く使い続けられます。
自分の歯のように使えますので、食事はもちろん、発音にも違和感がありません。
インプラントのデメリット
歯を入れる方法として、インプラントを選ぶデメリットはこちらです。
- 外科手術が必要になる
- 治療には時間がかかる
- 自費なので治療費が高額になる
- 治療が受けられない人もいる
インプラントは長く使用できるとはいうものの、外科手術が必要になります。
入院が必要な場合もありますので、まとまった治療期間を覚悟しておいた方がいいでしょう。
保険適用外なので、1本40万~60万円と治療費が高額になります。
どの方法で歯を入れるか
歯を入れる3つの方法をご紹介しましたが、それぞれメリットやデメリットがあります。
そこでどの方法で歯を入れるべきか、
治療方法選択のポイントについてご紹介します。
- どの程度の歯を失っているか
- 歯磨きやメンテナンスは可能か
- 患者さん本人の好み
- かかる費用で決めていく
どの程度の歯を失っているか
まずは欠損歯が何本あるのかという点で、適切な治療方法を考えてみましょう。
例えば、欠損歯が1本であればブリッジでの治療が可能ですが、3本連続箇所に欠損歯があればブリッジは難しいでしょう。
入れ歯やインプラントであれば、全ての歯を失っていても治療ができます。
また残った歯や口腔内の状態も重要な要素となっており、ブリッジを支える歯が弱っているようでは人工の歯を支えられません。
患者さんの希望だけでなく、治療できる条件が揃っているかもポイントになります。
歯磨きやメンテナンスは可能か
歯を入れる方法によって、歯磨き以外のお手入れが必要になる場合もあります。
ブリッジやインプラントは日常的な歯磨きがお手入れの基本となりますが、入れ歯は入れ歯の清掃も行う必要があるからです。
ただしブリッジやインプラントにしたからといっても、定期的に歯科医院に通い、定期健診やメンテナンスを受けていかなければいけません。
「どの方法が負担を感じにくいか」「日常的に継続できそうか」と、ストレスの少ない方法を選ぶといいでしょう。
患者さん本人の好み
多数の条件が合えば、患者さんの好みや希望が優先されます。
「審美性を求めたい」「できるだけ自分の歯を残したい」「治療期間を短くしたい」
「長く使えるようにしたい」など、希望はさまざまです。
仕上がりの美しさやお手入れ方法などを考慮し、歯科医院でじっくりと相談しましょう。
かかる費用で決めていく
インプラントは保険適用外なので、高額な治療費がかかってしまいます。
保険適用内で治療方針を決めていくとなれば、選択肢は限られてきます。
ブリッジや入れ歯は素材によって治療費が変わってきますので、使い心地や体質だけでなく費用面も考えて決めていくといいでしょう。
歯がなくなると起こる障害
歯を失ったままでいると、どのような障害が起こるのでしょうか。
歯を失ったら、必ず歯を入れなければいけないのでしょうか。
歯がないとこのような障害が起こる可能性があります。
- 審美障害
- 咀嚼障害
- 嚥下障害
- 発音障害
審美障害
歯がなくなると見た目的な問題、審美障害となります。
特に前歯がなくなると相手に与える印象が大きく変わりますので、接客業をしている人は気になるかもしれません。
歯がないという直接的な問題だけでなく、内側から支える力がなくなるので、唇や頬が陥没していきます。
次第にほうれい線や口元のしわが目立ちやすくなるという懸念があります。
咀嚼障害
前歯がなくなると、食べ物を口に入れる際に嚙みちぎるという動作が難しくなります。
奥歯がなくなると、物理的に噛み砕くという動作が難しくなり、消化器系の臓器に負担がかかるようになってしまいます。
歯が1本ないだけでも咀嚼機能率が低下してしまいますので、健康面を考えても歯が大切だとわかります。
嚥下障害
嚥下(えんげ)とは、口から胃へ食べ物を送る一連の動作を指します。
食事を飲み込む時には、上下の歯がしっかりと噛みあっていなければいけません。
そのため歯がなくなると嚥下障害を起こしやすく、誤嚥性肺炎などのリスクもあります。
発音障害
前歯がある時はあまり意識しませんが、前歯がなければ発音できない音があります。
例えばサ行やタ行、ラ行などの発音に影響が出るでしょう。
奥歯がなくなると空気が漏れてしまい、「き」「ち」といった音が出しにくくなります。
歯がなく発音障害が起こると、言葉が伝わりにくくストレスを感じるようになってしまうかもしれません。
歯を入れて自信をもって過ごす
歯を失ってしまった際に、歯を入れる方法は3つあります。
ブリッジ、入れ歯、インプラントの3つの治療法は、どれもメリットやデメリットがあります。
歯がないままでいると咀嚼障害や嚥下障害のリスクがあり、健康にも影響が出るかもしれません。
残った歯の状況や口腔環境、患者さんの好みなどによって、歯科医院で相談しながら治療法を決めていきましょう。