こんにちは!
岩手県盛岡市のマモインプラントクリニックマリオスの理事長高橋衛です。
インプラント治療による健康寿命との関係に近年、注目が集まります。
1.インプラント治療で健康寿命を延ばすことはできるのか?
インプラント治療は歯の健康や美しい口元のためだけではなく咀嚼機能の改善、代謝と栄養改善を経由して、体脂肪量の減少、骨格筋量の増加など体組織改善につながることも大きなポイントです。
健康寿命の延伸や健康への寄与をインプラント治療はもたらしてくれます。
超高齢社会を迎えるにあたり、医科だけでなく歯科においても「健康寿命の延伸」に対してどう関与できるかがおおきなポイントになります。
下記の図は平均寿命と健康寿命の関係を表した図です。
現時点での課題を見据えて、今後インプラント治療は「機能回復」から「健康回復・維持」へといかにシフトしていくかが求められます。
「生活習慣病予防のためのインプラント治療」座談会から引用
すべての歯が生え揃っていることが、最高の健康寿命の延伸
歯を失う理由として 虫歯や歯根の疾患、事故、年齢によるものなど理由は様々です。
歯を失ってしまった時、治療方法のひとつに失った歯の代わりにチタン製の歯根を顎の骨に埋め込み、上から人工の歯を装着するインプラント治療があります。
インプラント治療とは歯を失った箇所に人工の歯根(インプラント)を埋入し、歯を補う治療法です。顎の骨に人工の歯根を刺し、歯の土台となる部分を安定させることができます。
失った歯の前後の歯を支えに、橋を架けるように治療するブリッジという方法もありますが、両隣の健康な歯を削るので負担が広範囲に及ぶことは仕方のないことです。失った歯以上に健康な歯を傷つけないという点からもインプラントは優れています。
入れ歯については着脱の手間がまず大変です、噛み合わせの問題や味覚の低下などデメリットが多いのも事実です。
ライフコース・アプローチの重要性
健康から未病、さらに疾病へ流れていく考え方がいま、非常に注目されています。
これをライフコース・アプローチ(乳児期、幼少期、思春期、青年期およびその後の成人期における物理的・社会的曝露による成人疾病リスクへの長期的影響に関する学問)と表現しています。
■下の左図は健康軌道の重要性を示す図です。
生活能力は幼児からだんだん上がって最大値に達し、その後、老いの軌道、病気の軌道が示すように低下していきます。
インプラントはその健康軌道を上昇させるところで非常に大きな役割をもっています。
何でも噛んで食べることができる
■下の右図は歯の本数別に「何でも噛んで食べることができる」人の割合を示しています。40代でも歯が19本以下になると半分女性が「噛んで食べることができない食べ物がある」と答えています。逆に70代でも歯が20本以上あれば「なんでも噛んで食べることができる」と回答しています。年齢ではなく、歯の健康度によって食品摂取が変わっているのです。
これを更に詳しくしたデータでは、50~70代になると総義歯では噛めていませんでした。
引用:国民健康栄養調査データ
これに対し、有床義歯での最大咬合力に比べ、インプラント支持有床義歯は有意に咬合力が上がり、インプラントそのものはもっと上がったデータがあります。咀嚼力の回復ではこの最大咬合力、食品粉砕力ともにインプラントはすぐれていることはわかっています。
「生活習慣病予防のためのインプラント治療」座談会から引用
2.歯科治療は未病に対する治療
ライフコース・アプローチにおいて、歯科治療は補綴(ほてつ)やインプラントを含め未病に対する治療という概念が必要です。
歯科は未病における何十年という長い疾病のリスクの蓄積を有しています。内因性の炎症の場合、炎症に栄養の問題がはいってきます。これをインプラントなどの補綴処置で改善する場合のリスクとして、細菌学的なリスク、菌血症などの問題に注意しています。
下図は口腔感染(バイオフィルム)と日本人の死亡原因の関係を示しております。
口腔感染(バイオフィルム)は急性感染症として肺炎を引き起こし、慢性感染症として動脈硬化を起こし、さらにDNAの修飾(メチル化)を起こします。DNA修飾の蓄積が日本人の死因の1位である「がん」から始まり11位の糖尿病まで、多くの疾患を引き起こしています。具体的には動脈硬化は死因の2位の心疾患と4位の脳血管疾患、および8位の腎不全と9位の大動脈瘤を引き起こします。死因第3位の肺炎(急性感染症)を引き起こすのもバイオフィルムです。
バイオフィルムの状況だけでなく、食事、栄養、内蔵脂肪が発症に関連します。また、ストレスや運動不足も関連してきます。これを歯科医院で全体的にコントロールし、持続する慢性炎症を消していくことが健康づくりにつながります。
「生活習慣病予防のためのインプラント治療」座談会から引用
3.インプラントがもたらす恩恵
健康の鍵は、栄養分を適切に吸収すること。歯で食べ物を噛み砕き、咀嚼によって消化酵素を含んだ唾液の分泌を促すことは、栄養を効率よく吸収するために必須です。
また、しっかりと咀嚼できることが認知症やメタボリックシンドロームのリスクを下げるのも多くの研究発表から明らがです。本来は歯を失うと咀嚼力が衰えますが、インプラントで補えば元の咀嚼力が甦るため、健康維持にも大きく貢献します。
インプラント治療は現在、もっとも咀嚼機能を回復させる補綴学的手段です。咀嚼機能回復からスタートする糖質偏重食・タンパク質低栄養の改善、食後高血糖や代謝性疾患の改善、骨量・骨格筋量など体組成改善の発現までをインプラント治療として包括できることを目指しています。